学費支援プラットフォーム「studygift」で思う、善意の仕組みと大学の意味[日本時事ネタ]
(2012-05-28 11:30:40) by 松永英明


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方法がまずかったために、このサイトは失敗した。だが、まずかったのは方法なのであるから、「修学資金に困っている学生を支援したい」という理念や目標は捨てないでほしいと思うし、家入さんも捨てる気はないだろう。じっくり検討し直して、できれば性急にならずにじっくりと練ってみてほしいと思う。常にβ版として改良するのがソーシャルメディアの性質だとしても、今回公開されたものはα版以前のあまりにも未熟なものだったと言わねばならない。

あまり論じられていないこと:「四年制大学→新卒採用」という枠組みを絶対視することへの根本的疑問

ところで、この一連の議論を通じて、わたしは一つ気になることがあった。大学生活を支援するという話の上で、「四年制大学を卒業して、新卒採用される」という枠組みそのものには誰も疑問を抱いておらず、その枠組みだけは誰もが不動の前提としているということだ。

そもそも彼女はなぜ「卒業」したいのか。studygiftのページでは、「そもそもGoogle+は就職活動のために始めたのですが、学費が支払えず退学になるという状態では通常の就職活動を続けることは不可能になってしまい、なんのために大学に入ったんだろう、と感じました」と書かれている。卒業すること、就職活動をすること、つまり新卒採用されることが当然の目標とされている。

でも、それはなぜなのか。いや、その枠組みがなぜ絶対の目標として立ち上がってくるのか。そう言ってしまうと身も蓋もないと言われてしまうかもしれない。studygiftの存在意義自体が失われてしまうと言うかもしれない。

だが、わたしは気になるのだ。大学は、「新卒採用の資格」を得るための「就職資格付与機関」にすぎないのか、という根本的な疑問が湧いてくるのである。「早稲田大学」というブランドの「四大卒資格」がほしい、というのなら、それがなぜ、どうして必要なのか、本当に突き詰めて考えたのか、と問いたい。

わたしは大学や学部や専攻を選ぶとき、「中野美代子先生から西遊記について学びたい」とか「西田龍雄先生から未解読文字について学びたい」とか「人間科学部で人間の行動について学びたい」と思って選んだ。これは学問そのものによる選択だが、それに限るものではない。卒業してどういう仕事につきたいからどういう勉強が必要で、そのためにはこの学校のこの学部でこんなことを学びたい、という思考だっていい。大学が「単位数揃え」以外の意味を持っていますかどうですか、ということを問いたいのだ。

もちろん、単位だけ揃えて、とにかく雇ってくれる会社に入るのが目標です、と割り切る道もある。つまり、大学を「単なる新卒採用のための一ステップ」と割り切る考えがあっても、それ自体は否定しない(だったら「就職予備校大学」としてビジネスに役立つマナーや知識や語学だけを身につけさせるもので充分だと個人的には思う)。だが、「四大卒→新卒採用」というルートだけを絶対条件として盲目的に信奉しているなら、もう一度考え直してほしいと思うのだ。

少なくとも、彼女が「大学で何を学びたいのか」については、文面からはまったく伝わってこなかった。「google+で日本一」も「奨学金打ち切り」もすべて「就職活動」というキーワードにつながっている。「何を勉強したいんですか」への答えがなく、ただ「復学したい」という気持ちしか伝わってこない。写真も大学の学習内容とはまったく関係がなく、だったら写真学校に行けばいいのに、とも思ってしまったりする。

大学を中退したわたしだが、大卒の資格は得た。詳しくは「放送大学を卒業しました。/社会人が大学で生涯学び続けるということ[絵文録ことのは]2011/04/05」に書いたが、放送大学で残りの単位を取得して卒業した。大学時代には授業に出るといっても単位を揃えるという目的が大きすぎた部分もあったが、放送大学では自分自身が本当に興味のあることを「学びたい」という気持ちで学ぶことができた。そして結果的に卒業研究含めて卒業に必要な単位を揃えて「学士」資格を得た。こういうのこそ本当の学問なのだろうなと思ったものである。

20代前半で大学生活を送りながら過ごす数年間は貴重な体験となるだろう。だが、それ以外にも道はある。彼女はすでにヨシナガさんの仕事を手伝うスタッフとして名前を連ねているという。公私ともにヨシナガさんをバックアップして働きながら、放送大学で少しずつ単位を揃えて数年かけて卒業することだってできる。写真について学ぶことを優先させたっていいと思う。

大学というルートを諦めろという話ではない。早稲田ブランドをさっさと諦めろとも言わない。ただ、「学生生活を続けることが就職活動に必要」ということが当然の前提とされていることに疑問を持ったという話である。

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