音楽業界に辞めてもらいたい、いくつかの売り方[音楽]
(2012-06-27 12:41:27) by 松永英明


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ダウンロード違法化などの問題で音楽産業・音楽業界のあり方が逆に問われる状況になっているが、今回は個人的に「こういう売り方はやめてほしい」と常々思っていることをいくつか挙げてみたい。これは、周辺的にではあるがアーティストの公式ファンクラブに関わった経験とそのとき観察したことに基づいての思いである。特にここ10年足らずの「CDが売れなくなってきた」時代においてレコード会社としてはやむなく選んだ戦略について、それがまたファンを離れさせる原因にもなっていると感じている。

以下、特に大手レコード会社の方向性としてよく見られるものである。もちろん、「いい音楽をリスナーに届けたい」という思いはすべての業界人に共通しているだろう。ただ、マネタイズの方法に難があるということは伝えたい。

ベスト盤を頻発しすぎ

シングル盤とLPアルバムが完全に別のものだったアナログレコードの時代には、アルバムはコンセプトを持った新曲集でシングル曲は入らず、たまにシングルのみを集めたアルバムが出る、ということが多かった。そんな時代であれば「シングルベスト盤アルバム」には大いに意味がある。

しかし、いまや8cmシングルCDもなくなり、マキシシングルとして2曲+そのカラオケを入れるのが普通になっている。そうするとフルアルバムとの見かけ上の差はほとんどない。ただ違うのは曲数と値段である。

そんな状況の中、CDが売れないことからの資金不足によって、大手であってもレコード会社は制作費をかけられなくなってきている。作曲家に新曲を依頼するだけの体力が失われてきているのである。しかし、定期的にCDを出さなければファンは離れていく(という強迫観念がある)。そこで結局、全新曲のオリジナルアルバムはほとんど作られず、ベスト盤ばかりが増えることになる――新曲を1、2曲入れることで、今までのCDを買った人もベスト盤を買い直さねばならないように仕向けて。もちろん、ベスト盤は過去に売れ行きのよかったシングル曲などを収録することで、販売側としては「従来のファンにも、これから入ってくる新規客にも」売ることができる、という皮算用がある。

だが、ファンの声としては「またベスト盤かよ」という声が高まってきてしまう。既存のファンにとっては「新曲一曲のためにすでに持っている曲を抱き合わせ販売されている」という気にもなってしまうのだ。その不満を解消する方法が「別アレンジ」ならまだしも、「デジタルリマスタリング」で済まされてしまうと腑に落ちない。

新規ファンを開拓するための「全部既存の曲」のベスト盤の方がまだすっきりしている。しかし、下手に新曲を一、二曲入れたベスト盤を頻発することによって、「二兎を追う者は一兎をも得ず」の結果に終わっている。

(ここでは移籍に伴うベスト盤については触れない)

カバーに頼りすぎ

ベスト盤と同様の理由で生み出されているのが「カバーアルバム/カバー曲の頻発」である。アーティスト自身が作詞作曲をするにしろ、作曲者に依頼するにしろ、アルバムの全曲で一から新曲を依頼することは難しい――ということはベスト盤の事情でも述べたとおりだ。そこで「自分自身の過去の曲を再収録」と違う方法を採ろうとすれば、当然「ほかのアーティストの過去の曲をカバーして収録」ということになる。こうして、全部他のアーティストの楽曲による「カバーアルバム」が出たり、あるいはカバー曲を増やしたりする企画が出てくることになる。

カバー曲には大きなメリットがある。カバーするくらいだから、原曲はもちろんいい曲である。それにすでに知っている人も多い。つまり、曲自体のハズレはなく、無難に一定レベルを担保されているのである。

もちろん、カバー自体が悪いわけではないが、あまりにもそれに頼りすぎるようになると「そのアーティストの持ち歌」が増えないことになる。そして、ファンも「またカバーか」と思うようになってしまう。

最悪なのは、「アルバムコンセプトを無視して、そのとき流行りの曲を強引にカバーで入れてしまう」ことである。そうでもしなければ売れない、という焦りが、「アルバム全体の流れを一曲でぶちこわし」という結果を生んでしまう。その結果、ファンが離れていく。

ぶつ切りCM

音楽の消費のされ方も変わってきた。一曲単位でダウンロード購入できる。その音楽データを「シャッフル」してランダムな順序で聴く――iPod Shuffleはその典型的な形だろう。このような音楽消費スタイルは、従来の「一つのコンセプトを持ったアルバムを一曲目から順を追って聴く」というスタイルとまったく異なるものである。その結果、アルバムからはコンセプトが失われ、ベスト盤やカバーアルバムの跋扈を許す結果となったともいえる。

もちろん、「アルバム単位ではなく個々の楽曲が売り」というだけならそれはそれで自然な変化である。だが、「個別の楽曲が売り」なのに「アルバム」というパッケージで売らねばならないことからいろいろな矛盾が生じている。

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