都道府県別「多い名字」可視化マップを作ってみた[日本史]
(2012-08-10 17:07:28) by 松永英明


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<画像:都道府県別「多い名字」可視化マップ中京>

6位「伊藤」は伊勢藤原氏が由来であることと見事に一致して三重でトップ、隣接する愛知・岐阜、少し飛んで秋田に勢力を広げている。伊藤氏は近畿より中京への発展を示したということになろう。いとうまい子(伊藤麻衣子)は名古屋市出身。

10位「加藤」は岐阜・愛知という信長初期勢力圏の名字。ここでは一位二位を争うが、他の県ではランクインしないという点で「山口」と似ている。加賀藤原氏のはずだが、旧加賀国である石川県ではまったくランクインしていない。加藤あいは愛知県清須市出身。

12位「山田」は石川・岐阜・愛知という南北ラインに沿って分布している。ここに多いのは尾張源氏系の山田氏の勢力かと思われる。

愛知のトップは「鈴木」であるが、東でも西でもない独特の勢力圏がここに存在しているように思われる。

全国ランキング18位以下の名字

以上のランキングに入らなかった名字のみを残してみると、一見して「東日本に少なく、中部と中国・四国・九州に多い」という傾向が見られる。つまり、東の方が大きな名字の勢力が大きく、西に行くにつれて多様な名字が見られるということだろう。

<画像:都道府県別「多い名字」可視化マップその他>

宮崎と沖縄の特異性についてはすでに述べたが、四国もかなりの独自性を見せている。また、色のついている名字がいずれも関東系の大分県も興味深い。

この図では関東と四国・九州を結ぶ必要がある場合、いずれも千葉県から線を延ばしてみた。四国の徳島県=阿波国と千葉県南端の安房国がいずれも「あわ」で同名なのは、阿波の住民が安房に移住したという歴史的経緯を反映している。したがって、四国と房総半島を結ぶ海の道はかなり古くからあったと考えられる。

可視化マップを振り返って

「佐藤山脈」といった図ではややわかりにくかった詳細な分布が直感的に把握できたように思われる。そして、「関東・東北」エリアと「中京」エリア、「北陸・近畿」を中心とした西日本エリア、四国・宮崎・沖縄の独自エリアが浮かび上がってきた。

きちんとデータを取り直したり、4位までではなくもう少し下位まで範囲を広げれば少し様相は変わってくると思われるが、大きな傾向はこの図で把握できるのではないだろうか。

この調査をしてみようと思うきっかけを作ってくれた「読書猿」くるぶしさん、そして元となるデータをウェブ上で公開してくださっている森岡浩さんには改めて感謝したい。

「名字は明治維新のときにつけた人が多い」という俗説が現在否定されていることについての補記(8/11)

「国民の大半が明治以降に苗字を持った」ということを前提としたブクマコメントやツイートが少数ながら見られるので補記。

「苗字帯刀が許される明治維新までの農民や町人は名字/苗字を持っていなかった。だから、明治維新のときに日本人の多くが苗字を新しく考えてつけた」という「常識」は、実は最近の研究で覆されている。

実際には農民や町人も姓や名字を持っていた。ただ、江戸時代に農民・町人は苗字を名乗ることを自粛するようになったのだという。そのために自分の家の名字を「忘れた」という例も確かにあったらしい。

そういうわけで、現在の名字も実は「明治維新のときに適当に考えてつけた」わけではなく、多くの場合はそれ以前からの根拠があったということである。

この件の詳細は関連記事「選択式夫婦別姓議論と「日本人の姓/名字」の歴史[絵文録ことのは]2011/02/15」ならびにその記事で紹介されている参考文献を参照していただきたい。

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