創刊号:「ゲニウス・ロキ」と場所の遺伝子[ゲニウス・ロキ/場所論]
(2008-09-01 00:45:24) by 松永英明


< ページ移動: 1 2 >

はじめまして。
「絵文録ことのは」というブログを開設している松永英明と申します。
このたび、「松永英明のゲニウス・ロキ探索」というメールマガジンを発
行することとなりました。

 「ゲニウス・ロキ」?

耳慣れない言葉です。
おそらく、聞いたことがないという方がほとんどでしょう。創刊号である
今回は、この言葉について深く掘り下げていくことにします。

ゲニウス・ロキというのは、ある場所の歴史、土地の記憶といったものを
指す言葉です。

ある場所における建築計画、あるいは都市計画には、その土地にまつわる
歴史的経緯ですとか、由来・由緒といったものを考慮する必要があるとい
う考え方です。

◎ラテン語では「土地の精霊」

ラテン語で「ゲニウス」というのは、「精霊」とか「雰囲気」といった意
味になります。これはちょうど英語のspiritに当たります。また、これは
何かを生み出す男性的な要素も意味します。「父性として子を産ませる」
という意味合いがあるのです。

「ロキー」というのは「ロコス」=「場所」の属格ですから、「ゲニウス・
ロキー」で「場所の精霊」とか「その場所をつかさどる雰囲気」といった
意味になります。ローマ神話において、ゲニウス・ロキーはある場所の守
護精霊であり、蛇の姿で描かれることも多かったといいます。

ただし、これは日本の「土地の神様」や「産土神」などとは違っていて、
姿形もなく漂っているようなものと考えられていたようです。

なお、現代日本では多くの場合「ゲニウス・ロキ」と表記されていますの
で、ここでもそれに従うこととします。

◎近代英国建築におけるゲニウス・ロキ

ゲニウス・ロキという概念を建築の分野に持ち込んだのは、18世紀のイギ
リスの風刺詩人アレキサンダー・ポープでした。ポープは、建築道楽で有
名だった政治家バーリントン卿リチャード・ボイルに宛てた書簡(「バー
リントン卿への書簡」、1731年)において「genius of place」(場所のゲ
ニウス)という言葉を使っています。これが、建築学にゲニウス・ロキ概
念が導入された最初の例であるとされています。

  すべてにおいて、その場所のゲニウス(精霊/雰囲気)に相談せよ。
  それは水を昇らせるべきか落ちさせるべきかを告げてくれる。
  覇気に満ちた丘が天に向かうのを助けるべきか、
  谷を掘って丸い劇場にするべきかを教えてくれる。
  土地に呼びかけ、森の中の開けた空き地を捕まえ、
  喜ばしい木々に加わり、木陰から木陰へと移り、
  意図したラインを切ったり、方向を変えたりする。
  あなたが植えたとおりに塗り、
   あなたが作ったとおりにデザインしてくれる。
  (松永英明訳)

すなわち、建築や造園において、「その場所のゲニウス」(=ゲニウス・
ロキ)に適合させようとすることが、趣味のよいものを作り出すことにな
るというわけです。

◎日本でのゲニウス・ロキ

日本でゲニウス・ロキについて最も雄弁に語っているのが、鈴木博之氏で
す。鈴木博之氏は東京大学教授で、建築史を専門としています。
『東京の[地霊(ゲニウス・ロキ)]』『日本の〈地霊(ゲニウス・ロキ)〉』
と、タイトルに「ゲニウス・ロキ」を含む本も書かれています。

「地霊の力(ゲニウス・ロキ)という言葉のなかに含まれるのは、単なる
土地の物理的な形状から由来する可能性だけではなく、その土地のもつ文
化的・歴史的・社会的な背景を読み解く要素もまた含まれているというこ
とである。こうした全体性に目を開くこと、すなわちタウンスケープを、
その土地固有の微地形や歴史性との対応のなかで読み解くことこそが、地
霊の力(ゲニウス・ロキ)に対する感受性を生み出すのである。」
 (鈴木博之『建築の七つの力』鹿島出版会、1984)

ここに引用した鈴木氏の言葉は、ゲニウス・ロキというものが「土地」を
読み解く上でいかに重要かということを如実に示していると思います。

 以上の内容については、「ゲニウス・ロキ - 閾ペディアことのは」もご
参照ください。

◎ゲニウス・ロキと「場所の遺伝子」

『都市の遺伝子』『建築の遺伝子』といった言葉が、建築・都市・景観な
どについて論じられた書籍のタイトルとなっています。

中沢新一の『アースダイバー』では、古代の聖地は岬などに作られており、
その名残が今も神社などとして記憶を留めているという考え方が土台になっ
ています。この本の内容については改めて検証することになると思います
が、これも「地形」や「場所」そのものが聖なる「記憶」をとどめる要素

Tags: ゲニウス・ロキ, 場所の遺伝子

< ページ移動: 1 2 >


コメント投稿
< 前の記事へ
TOPへ戻る

Powered by
MT4i 3.1a3